2011-07-01

Chaotic Next Stage                      第23号

                                                  発行責任者  稲崎義明

ITILについて(6)

 

サービスに対する需要管理と連携して将来必要となるキャパシティの予測の元に適切なキャパシティ設計をするのがキャパシティ管理プロセスです。キャパシティ管理プロセスは階層化され、ビジネスの需要から将来のキャパシティ要件を予測するビジネスキャパシティ管理と各コンポーネントのキャパシティ情報をモニタリングして増減を管理するコンポーネントキャパシティ管理、それとこれら二つからの情報をインプットにサービスレベルに直接的に関係する項目を管理するサービスキャパシティ管理の三つのレイヤを定義しています。キャパシティ管理プロセスはITサービス設計時のキャパシティ計画と日常実行される実装、監視、分析、チューニングの5つのアクティビティで構成されています。このうちキャパシティ計画では、ITサービスとそれを構成するコンポーネントの現在の能力、需要管理やビジネスキャパシティ管理から導き出された将来のキャパシティ予測などを基に、適切な容量・能力の機器構成を設計して導入計画を策定します。ITILでは適切なキャパシティの予測・設計を行う代表的技法としてモデル化とアプリケーション・サイジングを紹介しています。モデル化は将来必要となるキャパシティを予測する技法の総称で、トレンド分析、シュミレーション、プロトタイプやべンチマーキングなどの擬似環境における検証などがあります。アプリケーション・サイジングは既存のアプリケーション構成の情報や予算などをインプットに技術や製品の組み合わせを設計してキャパシティ要件が満たされるかを見積もる技法です。キャパシティ管理プロセスではビジネスキャパシティからサービスキャパシティ、サービスキャパシティからコンポーネントキャパシティという順に段階的に細分化していくことが重要となります。また、ディスクやマシンの低価格化により必要以上のキャパシティの機器が購入され、キャパシティに対する意識の低下を招く危険性があります。当面はよくても非効率的な処理設計が行われることにもなり、コスト効率の高いキャパシティを実現していくにはこまめなリソースの管理・分析・チューニングを行うことが求められます。

ビジネスの重要性に応じた費用対効果の高い最適な可用性を設計するのが可用性管理プロセスです。可用性は稼働率を指標とするもので、ITサービスにおける可用性はここの情報システムの信頼性、保守性、サービス性の3要素に分解することができます。信頼性は平均故障間隔(MTBF)で表され、保守性は平均修理時間(MTTR)で表されるもので、サービス性はサプライやとの契約における可用性、信頼性、保守性を含めた指標で稼働率、MTBF、MTTRなどで表されます。可用性管理プロセスの活動としては、既存のITサービスの可用性を日常的に監視・管理するリアクティブなプロセスとリスク分析、可用性計画の策定、可用性設計基準などの作成を行うプロアクティブなプロセスに分解できます。リスクアセスメントではリスク分析やリスク管理の技法を用いてITサービスが停止した場合の影響を評価分析し可用性の要求レベルを決定します。要求された可用性レベルに対して概算コスト穂算出し、ビジネスの許容範囲を超えた場合は再検討します。可用性管理プロセスにおける技法としては、コンポーネントが故障した際の影響範囲を分析するコンポーネント障害インパクト分析とリスクを分析管理する技法であるCRAMM、障害発生時のサービス停止時間が検知、診断、修理、復旧、回復の各サイクルでどれだけかかっているかを分析し、ネックとなっている工程を特定し、是正を行うことでサービス停止時間の短縮を図る拡張インシデントライフサイクルがあります。可用性はインフラストラクチャの構成を決定する上で重要な要素であり、特に金融機関などの社会インフラとなる情報システムでは非常に高い可用性が要求されています。 (次回へ続く)