2011-06-01

Chaotic Next Stage                      第22号

                                                  発行責任者  稲崎義明

ITILについて(5)

 

サービスデザインは、顧客の期待・要望に対して適切なITサービスを提供する戦略を策定するためのライフサイクルである「サービスストラテジ」で策定されたサービス戦略に基づき品質・コンプライアンス・リスク・セキュリティを十分に考慮した上で、効果的・効率的なITサービスのソリューションを設計するライフサイクルになります。サービスデザインには、サービスカタログ管理、サービスレベル管理、サプライヤが含まれますが、ITサービス提供部門が提供するすべてのITサービスをサービスカタログとして一覧化して、変更に応じてその維持・更新を行うサービスカタログ管理プロセスに対して、サービスレベル管理プロセスは、ユーザがITサービスに求めるサービスレベルをユーザ部門と調整した上で、サービスレベル合意(SLA:ServuceLevelAgreement)として合意するものです。さらに合意したSLAが達成されているかをモニタリング・レビューしてサービスレベルの維持・向上を図ります。SLAは以前から使われていましたが、それまでのSLAはITサービス部門と外部のサプライヤ間で締結されていたものでした。しかし、ITILにおけるSLAはITサービス提供部門とユーザとの間の社内合意文書の位置づけであり、外部サプライヤと合意されるものはオペレーショナルレベル合意(OLA:Operational Level Agreement)や外部委託契約書(UC:Underpinned Contract)としてSLAとは別物として定義されています。

SLAにはITサービスの概要やサービス提供にかかわる役割・責任分担、サービスレベル目標、目標未達成時の対応などが合意事項として取りまとめられています。代表的な管理指標としては、サービスを提供する時間帯(月〜金の9:00〜17:30など)、事象が発生してからの検知時間、解決時間などがあります。これらの指標には測定できるものである、ビジネスにとって意味のあるものである、コントロールできるものである、実現できるものであるなどの条件を満足している必要があります。つまりあいまいな表現でとり方によって変化するような表現ではなく、数値として表し評価できる必要があるということです。

SLAは合意することが目的ではありませんから、その内容を継続的にモニタリングしてレビューを繰り返すことによってITサービスのレベルを維持・向上していく一連の活動がサービスレベル管理プロセス(SLM:Service Level Management)です。SLMを導入することによりユーザ部門には安定したITサービスの提供と向上、ITサービス提供部門にはユーザ部門とのコミュニケーション促進によるユーザの要求の正確な把握、SLAの達成度による的確な説明、さらに不要または過剰なサービスの提供の排除が可能となります。

サービス管理プロセス(SLM)はユーザとの間で提供するサービスの内容や期待するサービスレベルなどを取りまとめたサービスレベル要求(SLR:Service Level Requirement)の取りまとめ、SLAの調整・合意、サービス提供レベルのモニタリング、提供したレベルに対する顧客満足度の測定、SLAの達成状況や未達成項目などについての定期的なサービスレポートの作成、サービスレポートの内容を基にしたサービス実績のレビューや未達成に対する改善策の検討などを行い、SLAのレビューや改定を行うなどのプロセスがあります。SLMは提供部門とユーザとのコミュニケーションのためのひとつの手法であり、両者が価値観を共有しそれぞれの事情を正確に理解し協力し合える関係を構築することが本当の目的です。   (次回へ続く)