2011-02-15

Chaotic Next Stage                      第21号

                                                  発行責任者  稲崎義明

ITILについて(4)

 

ITILの初版(Ver1)が発行されたのは1991年ですが、2000〜1年に書籍群の重複部分の整理・改訂が行われVer2として再編成され、さらに2007年に再改訂されVer3となりました。

まず、Ver2の中心となるのは「サービスサポート」と「サービスデリバリ」の2つの書籍です。サービスサポートは、ITサービスを提供するにあたっての日常的な運用サポートプロセスとしてサービスデスク機能と、インシデント管理、問題管理、変更管理、リリース管理、構成管理の5つを取りまとめたものです。顧客やユーザからの問合せや障害連絡はサービスデスクで受付・記録され、インシデント管理を通じて対応がなされます。その後問題管理によって根本原因とその是正策が特定され、変更管理・リリース管理を通じて情報システムの本番環境に移行・導入されます。ハードウェアやソフトウェアの世代情報や資産情報が変更される場合は構成管理を通じて構成情報が更新されます。一方サービスデリバリは、中長期的なITサービスの計画と改善を行うためのマネジメントプロセスについて記述したものです。構成としては、サービスレベル管理を中心としてITサービス財務管理、キャパシティ管理、可用性管理、ITサービス継続性管理の5つのプロセスから構成されています。各プロセスはそれぞれ計画・実行・評価・是正といったPDCAサイクルを内在し、そしてITサービスのキャパシティや可用性などを継続して改善していくことになります。また、キャパシティ管理、可用性管理、ITサービス継続性管理は、ITサービス財務管理とトレードオフの関係にあり、サービスレベル管理を通じてこれらトレードオフとなるプロセス間の調整が図られていきます。しかし、Ver2ではITサービスマネージメントを実践するために必要な機能ごとに書籍としてまとめられたため困ったときの助けとしては大変利便性がありましたが、全体像を理解するためにはすべての書籍を読破しなければならないという問題がありました。そこでVer3では、ITサービスのライフサイクルの視点から再構築され、Ver2でサービスサポートとサービスデリバリに分けられていたものが、ビジネスニーズを踏まえたITサービス戦略から、ITサービスの設計、本番環境への移行・導入、日々の運用・サポート、継続的な改善といったITサービスのライフサイクルごとの5つの書籍に変更されました。この5つのライフサイクルは、ITサービス戦略策定の「サービスストラテジ」からITサービスの設計の「サービスデザイン」、ITサービスの本番環境への移行・導入の「サービストランジション」、日々の運用・サポートの「サービスオペレーション」と継続的なサービス改善といった一連の流れとなっています。Ver3ではライフサイクルごとに分冊とはなっていますが、それぞれにはいろいろなプロセスがあり、すべてのプロセスがそれぞれのライフサイクルに閉じているということではなく、例えばVer2のサービスデリバリに含まれていたサービスレベル管理は「サービスデザイン」のライフサイクルになっていますか、サービストランジションやサービスオペレーションなどの複数のライフサイクルを横断したプロセスとなっています。他にもキャパシティ管理も同様であり、構成管理などはすべてのライフサイクルを横断して実行されるプロセスとなっています。このように、Ver3では最も関連性の高いライフサイクルにおさめられたプロセスも多く、必ずしもプロセスとライフサイクルが1:1の関係でないことに注意する必要があります。

ITILのVer3では5つのライフサイクルに分けて書籍群として取りまとめられていますが、このうちサービスデザインに含まれるサービスレベル管理プロセスについて説明してみることにします。   (次回へ続く)