2010-12-15

Chaotic Next Stage                      第20号

                                                  発行責任者  稲崎義明

ITILについて(3)

 

サービスはこれまで書いたように形のあるものではありません。そのためその価値を定量的に測定することも難しくなります。同じサービスを提供したとしてもそのサービスを受けた人によっては大変価値のあるものになったり、まったく価値が無いどころかその逆になったりします。サービス価値を定量的に算出する式は次のようになります。

サービス価値 = サービス品質 / サービスコスト

サービス品質:実績の品質−期待の品質

サービスコスト:サービス料金+その他のコスト

サービスコストはサービスを受ける側の支出するコストで、直接的に支払うもの意外にサービスの提供を受けるまでのコスト(例えば交通費、電話代など)を含みます。サービスの品質は、受けるサービスに対して期待しているサービス程度(期待品質)と実際に受けたサービスに対する受け側の実感(実績品質)の差となります。サービスの価値を最大にするには、サービス品質を最大にしてサービスコストを最小にすればよいのですが、サービス品質とサービスコストの間には正の相関関係があり、分子と分母のどちらかだけを考えればよいというわけにはいきません。またこの相関関係にも特徴があり、ある一定レベルに達するとそれ以上コストをかけてもサービス品質がなかなか上がらずサービスを受ける側に認知されないということがあります。提供する側としてはこの相関関係を理解した上で最適点を見出すことが必要となります。つまり、たとえば運用サービスを提供する際に必要以上に人を投入してもサービス品質が上がらないばかりか余剰人員ばかりが目に付くこととなり、逆効果となることがあるということです。サービスを受ける側としては、対応する人が多ければよいということではなく、必要なときに的確にタイムロス無くサービスが受けれることがサービス価値が上がるということになります。

ITにおけるサービス提供の新しい方法として「クラウド」がありますが、これはこれまでハートーウェアやアプリケーションを提供し他に運用サービスを提供してきたものを、これまで企業側が保有していたハードウェアやアプリケーションをサービス提供側が保有することによって、業務アプリケーションの機能とそれを使いこなすためのサポートをアプリケーションサービスとして提供しようとする新しいサービスの提供方法です。サービスの提供を受ける側としては有形のものはありませんし、どの程度のシステム構成(サーバが何台あるとかOSは何であるかなど)がどうなっているかということについても関係がなくなります。サービスを提供受ける側としては、必要なサービスを必要なときに必要な内容で受けることができるということであり、無形のサービスとして提供されるものです。

ITサービスマネージメントはITを顧客に提供するサービスとして捉え、その価値を最大化するためのものです。ITサービスマネージメントを考えた場合陥りやすいのはシステム運用の手順を整備しようとすることを考えることです。実際はサービスを受ける側に対してITサービスの価値をいかにして最大にできるかといった視点で捉えなければなりません。

ITはサービスそのものであり、サービスを受ける側としては形の無いサービスそのものです。必要なのは必要なときに必要な機能が十分に使える状態でなければならないということで、機能が十分というだけでもサービスとしては十分ではなく、安定かつ快適で困ったときに適切なサポートが受けられることが最低限利用者側の求めていることになります。   (次回へ続く)