2010-12-01

Chaotic Next Stage                      第19号

                                                  発行責任者  稲崎義明

ITILについて(2)

 

サービスには前回書いたように4つの特徴がありますが、その特徴をきちんと理解し、サービスを提供する際にも理解した上で提供する必要があります。

まず「無形性」についてです。サービスには形が無く触ることや試すことができないことはよくわかります。しかしそのために顧客の適切な期待価値の形成を困難にさせている大きな要因となっていること知っておかなければなりません。つまりサービスを受ける顧客にとって期待価値は、これまで提供を受けていた顧客にとってはある程度その経験から判断することはできますが、初めて提供を受ける顧客であったり、顧客の担当者が代わった場合などにとってはそのサービスがどの程度の価値をもたらすものか判断することは困難となります。同じようにサービスを提供しても顧客側の抱いたイメージと異なった場合は不満になったりします。そのために必要なのがサービスの可視化で、サービスに対してもつ顧客の期待価値を積極的に作りこんでいくことが求められ、サービスカタログとしてサービスの内容・品質・価格を一覧化して顧客と共有することにより適切な期待価値を形成することができます。

次に「生産と消費の同時性」ですが、この特徴にはサービスの提供プロセスにサービス提供側と顧客が参加するということになります。つまり、サービス提供側が一方的に提供するのではないばかりか、顧客側が一方的に消費できるものでもありません。このようにサービスの一連プロセスがサービス提供側と顧客の共同プロセスで行われるということから、サービスの品質にはサービス提供側だけではなく顧客によっても左右されるということになり、顧客側の役割・責任も明確化して定期的に周知教育することも重要となります。

さらに「不均質性」ですが、サービスの無形性からも来るのですが形ある製品に比べ品質を一定に保つことが困難で品質にばらつく可能性があるということになります。サービスの品質はその対応した担当者のスキルや経験に影響されます。そのサービスに介在する人の比率が高くなるに従って顕著になります。以前と同じサービス要望であっても対応する人が変わることによって大変不満なものになったり、逆に満足するということになります。ITサービスの場合これが最も顕著となるのは「サービスデスク」です。サービスデスクはユーザからの要望を受付対処するところですから、対応する内容は簡単なことから専門知識が必要となることまで多岐にわたりますが、ユーザとしてはその程度の判断がつかないものも多いわけですから、本来は対処する範囲を逸脱したものであった場合特にその対処は簡単な内容と同様にきちんと対処する必要があります(もちろん範囲を逸脱したものであった場合自由分に湯へ座側にそのことを理解してもらう必要があります)。このような場合の対処としては、プロセスの標準化によるサービス品質の向上や提供側のプロ意識向上の取り組みが効果的です。

最後が「消滅性」で、これは生産と消費が同時であることからサービスを在庫して置けないということです。そのため、ユーザからの需要の変動に対応することができません。ユーザ一人からの需要が変動することは問題ないのですが、一度にたくさんのユーザから要望が集中した場合うまくしないと対応できなかったユーザに不満が残りますし、一方要望が少ない場合は遊んで見えたりします。対応するためには、サービス提供能力に柔軟性を持たせる、需要に優先度をつけて集中して対応する、需要自体をできるだけコントロール(例えば内容を限定して対処日を設定するなど)するなどの方法をとります。需要の把握とコントロールは簡単ではありませんが、このボトルネックと過剰キャパシティは注意が必要です。   (次回へ続く)