2010-11-15

Chaotic Next Stage                      第18号

                                                  発行責任者  稲崎義明

ITILについて(1)

 

今回からITILについてです。ITILは情報システムの安定かつ安全な運用を支えるフレームワークで、IT Infrastructure Libraryの略で、1980年名代後半にイギリスで取りまとめられたものです。目的は、政府で情報システムを活用することによって膨らみ続ける運用コストをいかにして削減するかにありました。しかし、セキュリティ規格のISO17799の元となったBS7799を取りまとめたのも1999年のイギリスですし、早くから問題視していたとはいえ、イギリスの仕組みとはどうなっているのだろうと思うところです。ところで、ITILの初版(Ver1)は1991年に発行された40冊程度にまとめられたドキュメントで、そのためLibraryとなっています。その後このITILの普及団体(itSMF)が設立され、2001年にはVer2が発行されています。イギリスではこの2001年にBS1500:2000として規格化されています。一方日本では、普及団体のitSMF Japanが2003年に設立され、ようやくこの後ITILが国内で知られるようになって来ています。

歴史はこの程度にして、ITILとは何でしょうか。ITILの前に、まずITをサービスとしてとらえる所から始まります。ITはもちろん情報技術の事で近年無くてはならないものとなってきていますが、技術的な所をとらえれば、最先端はという事にもなりまるが、使う側からとらえると「サービス」の一つとみる事ができます。どれだけ便利になるのか、使えるのかがサービスとしては重要な所です。この様に使う側の要望にどれだけ答えるのか、適切なITサービスを利用者に計画、開発、提供、維持していくアプローチを「ITサービスマネージメント」といいます。ITILはこのITサービスマネージメントをどう実践していくかのガイドラインを実績のあるものを集めてとりまとめたものです。まずはITをサービスとしてとらえなければなりません。一般的なサービス業となんら変らないのです。一見ITサービスが他とは異なるように思えるかもしれませんが、ホテルや飲食などが提供するサービスと基本的な所はかわらないという事です。

ITをサービスととらえる前に、サービスとは何なのかの定義をしたいと思います。サービスはおまけで提供したり無料で提供するものではありません。サービスは顧客に対して何らかの価値を提供する活動で、すべてが人の労力で提供されものと考えがちですが、実際はさまざまなモノやシステムを複合的に組み合わせて価値のあるサービスを提供するものです。つまり、サービスもひとつの商品であって、提供した価値によって対価が伴うものです。しかし、普通の商品とは異なり触れることのできない商品ですが、有形で提供されていると思われる一般の商品(たとえば家庭電化製品など)もその程度はいろいろありますがサービスを含んだ形(保障やアフターサポートなど)で提供されています。

サービスを良く理解するにはその特徴を正しく捉えることが必要ですが、サービスが異なればその特徴もいろいろあり、まとめると次の4つの特徴があります。

・無形性(形が無く、触れることや試すことができない)

・生産と消費の同時性(サービスの生産と消費が同時に進行する)

・不均質性(サービスが提供する都度状況などによって品質がばらつきやすい)

・消減性(生産と消費の同時性から作り置きすることができない)

一般的な商品のように事前に触ることができないという無形性のため、顧客に対して期待される価値を適切に形成してもらうのが困難となるという大きな要因となっています。    (次回へ続く)