2010-09-01

Chaotic Next Stage                      第17

                                                  発行責任者  稲崎義明

クラウドコンピュータについて(6)

 

クラウド関連のサービスについてですが、「HaaS」や「IaaS」は前にも書きましたが、コンピュータリソースの提供サービスですし、「SaaS」はアプリケーションリソースの提供サービスですし、「PaaS」は開発環境などのプラットフォームを提供するサービスです。アプリケーションの提供サービスである「SaaS」などは以前からあったものです。このようにこれまであったものを見方や呼び方をクラウドとしているものもあります。その点から「クラウドには新しいものは何も無い」という見方をする人もいます。しかし、発展形であるにしても全体的にはこれまでと違った利用方法であることは確かです。そこで、実際に企業で利用するプライベートクラウドについて具体的に考えて見ます。

プライベートクラウドは1企業内で構築するクラウドです。サーバ統合の1つと考えることもできます。これまで企業内には多数のサーバが存在しました。導入システムごとに1サーバと言うこともあります。それにバックアップなどを含めると簡単に10台を超えるものでしょう。1つの解決方法として「ブレードサーバ」があります。ブレードサーバは、CPUやストレージ、ネットワークなどをモジュール化して、エンクロージャなどと呼ばれる筐体に高密度に装着しすることによって、サーバを構築するもので、筐体内のCPUなどのモジュールはそれぞれの負荷を動的に変更できるようになっているものです。一方プライベートクラウドの場合、クラスター化した複数台あるサーバのCPUやストレージなどのリソースを管理するアプリケーションがあり、1つの塊として管理することができます。リソース管理機能によってネットワーク経由でユーザに仮想マシンを提供することができます。プライベートクラウドの場合、役割が異なる複数のコンピュータで構成され、仮想マシンを稼動させるコンピュータ群、それらのクラスターを管理するコンピュータ、ユーザからのリクエストを受け付けるコンピュータ、ストレージを管理するコンピュータなどで構成されています。このようなクラウドを構築することによって、企業内での負荷分散ができ、拡張やリプレースはクラウドを構築するコンピュータ群に対してすることとなり、ユーザとしては必要なときに必要なシステム環境を使えるだけでなく、パブリッククラウドのようにセキュリティなどの不安を少なくすることができます。

企業のシステム管理としては、サーバの管理などが大きな負荷となってきています。外部からのいろいろな脅威に対処する対処することも必要ですし、新しいシステム導入には、サーバなどの管理運用が増えることになります。システムを開発するとなると開発環境が必要となり、導入にはハードウエアやデータベースなどの購入などが必要となります。今後については1企業で困難な場合は、関連企業、関係会社などでプライベートクラウドを構築することが広がっていくのではないでしょうか。クラウドにすることによってこれまでの運用管理業務も大きく変化していくものと考えます。前にも書きましたが、どこまでセキュリティを気にした100%のシステムを作らなければならないのでしょうか。セキュリティに100%は今のところありません。クラウドを使うことによるプラスとマイナスを考え、利用することを前提にマイナスをいかに小さくするかが必要な気がします。

PCのログ管理システムのInfoTraceやサイボウズガルーンなどがSaaSで提供されています。導入側とすれば、サーバの構築、ソフトウエアのインストールなどが必要なくなり、バージョンアップも基本障害対応もなくなります。クラウドというそれこそ雲をつかむような言葉に振り回されずに、導入するから利用すると理解したほうがいいようです。      (連載終了)